「続 昭和街場のはやり歌」前田和男著
「続 昭和街場のはやり歌」前田和男著
1970年代は歌謡曲のカバーがヒットした時代だった。中でも加藤登紀子の「知床旅情」は140万枚を超える大ヒットに。元歌は俳優の森繁久弥が知床で歌い継がれてきた「さらば羅臼よ」に歌詞を補い、「しれとこ旅情」としてレコード化したもの。
加藤は恋人だった学生運動のリーダー、藤本敏夫がその歌を朗々と歌うのを聞いてうちのめされ、「白いカモメを」を「白いカモメよ」にするなど、歌詞を一部変えて歌った。森繁版は去り行く男と見送る女の相聞歌風だが、加藤版には藤本の「政治の季節への惜別」が仮託されていたのではないか。
ほかに北原ミレイの「石狩挽歌」など、流行歌の背景の「昭和」を読み解く。 (彩流社 2420円)