「昭和歌謡と人文学の季節」井口貢著
「昭和歌謡と人文学の季節」井口貢著
昭和の歌謡曲とともに半生を過ごしてきた大学教授が、その時々に聴いた歌とともに自分史を振り返りながら、「自由な想像力と創造力を発揮するための技能」としてのリベラルアーツ(教養)の大切さを説いたエッセー。
著者にとってのリベラルアーツとの最初の出合いは、中学時代の旺文社文庫と、他校から異動してきた音楽と国語の2人の教師からの影響による音楽と文学・文芸体験だったという。
中学3年のときには、級友らとバンドを組み、音楽室を拠点にしてプロテストソングをコピー。2人の教師を含む学年の担任団は、眉をひそめるどころか、バンドのライブを企画してくれたという。
高校3年のときには南こうせつとかぐや姫の「神田川」が大ヒット。その前年にデビューした荒井由実(松任谷由実)の初アルバムに収録された「ひこうき雲」を主題歌にしたジブリ作品「風立ちぬ」、そして軽井沢の万平ホテルをイメージしたという松田聖子の「風立ちぬ」の話など、歌謡曲をBGMにして、リベラルアーツを学びの底流にして育む人文知の大切さを説く。 (ナカニシヤ出版 2640円)