「ここに物語が」梨木香歩著
「ここに物語が」梨木香歩著
人気作家が深く心を動かされた書物について語るエッセー。
冒頭で取り上げられるのは「伝えたい一冊」と題し、母親が幼い頃に作ってくれた手鞠の思い出とともに語り始める「失われた手仕事の思想」(塩野米松著)や「少年長編叙事詩 ハテルマ シキナ-よみがえりの島・波照間-」(桜井信夫著)などが並ぶ。後者は終戦間際に沖縄のさらに西の島々で何が起きていたのか、そのおぞましいまでの日本軍の行動と島民たちの絶望を少年叙事詩という形で子どもたちに伝える。
ほかにも「あらしの前」(ドラ・ド・ヨング著)などの児童書から、「百年の孤独」(ガルシア・マルケス著)などの名著、そして雑誌の特集、さらに映画評まで。本の中に潜む物語の「種」と出会う読書の醍醐味をつづる。 (新潮社 781円)