「友近の思い立ったらひとり旅」友近著

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「友近の思い立ったらひとり旅」友近著

 旅に出たなら、その土地ならではの食や景色などを楽しみたいと計画を立てるだろう。SNSで人気のレストラン、ガイドブックで紹介される景勝地もいいけれど、地元の人だけが知る「ここぞ」を味わってみたい。今回はローカルコンビニからターミナル近くの食堂まで、地元愛あふれる4冊を紹介。



「友近の思い立ったらひとり旅」友近著

 世の中で一番好きなものは「旅」という著者がこれまでにひとり旅で訪れた25の地方と、その魅力をつづった旅エッセー。

 愛媛・松山の人気温泉地といえば道後温泉。美人の湯といわれ女性に大人気だが、実は男性にとってもうれしいスポットだという。それは日本の温泉地では全国で3軒しかないストリップ劇場が健在で、懐かしい昭和の雰囲気も楽しめるという。グルメは鯛(マダイ)がイチオシで、ぜひ「ぶっかけ鯛めし」を知ってほしいと力説する。

 ある日、列車が好きな著者は「えちごトキめきリゾート雪月花」で新潟・妙高高原に向かう。北陸新幹線で糸魚川まで行き、「雪月花」に乗り換えるのだ。乗るとすぐにウエルカムドリンクにほおずきサイダーが出てきたが、これがおいしくてびっくり。そして最初の停車駅・筒石で驚かされたのは、なんとトンネルの中にホームがあることだった……。

 弾丸で楽しみつくすための、お気に入りの宿、グルメ、観光列車にお土産まで極意を一挙公開。

(新潮社 1815円)

「壊れる前に旅に出た」菊池真理子著

「壊れる前に旅に出た」菊池真理子著

 とりたてて不満はない毎日だが死が迫ってくる感じがした著者は、50歳になったある日、逃避行のような突然の無計画旅に出た。

 最初に訪れたのはいつか来たいと思っていた山奥の三峯神社。翌日、長瀞でのんびり過ごしているうちに、「帰りたくない」と思う。そこで改めて車中泊の準備を整え、今度は伊豆半島一周の旅へ。海を見つめていたとき、人と一緒だと何か感想を言うが、その言葉を言った途端、言葉にならない感覚は消えてしまう。だから私は黙ってひとりでいたい──。

 母が宗教にハマり、父はアルコール依存症という中で育った著者は、親より大きなものを与えられることに戸惑い、自分は同じものを返せないと後ずさっていた。そんな過去を両親の故郷・岩手で思い出した著者は、心にフタをして生きてきたことに気づく。旅の間はやるべきことは何もなく、いつも無視している自分の相手を思う存分してきた著者の自分を取り戻す小さな旅を描くコミックエッセー。

(文藝春秋 1100円)

「全国ローカルコンビニグルメ図鑑」加藤弘倫著

「全国ローカルコンビニグルメ図鑑」加藤弘倫著

 旅先での楽しみのひとつは、その土地ならではの食べものだろう。実は画一的に見えるコンビニにも「地方色」があるのだとか。本書は北海道から沖縄まで、実際にローカルコンビニを訪れた著者が、グルメを中心に紹介したガイド図鑑だ。

 北海道の「セイコーマート」は、50年以上の歴史を持つ地元密着型コンビニ。PB商品も多く、自社工場でつくる牛乳や乳製品、ちくわパンや、自慢の北海道牛乳を使ったプリンが人気だ。鹿児島のイケダパンが手掛ける「アイショップ」は、店内ベーカリーのほか、地場野菜や果物なども扱う。

 ほかにも「わざマート」(長野)のいちじくのカンパーニュ、「うずや」(富山)のビーフ100%のビッグバーガー、「オレンジハート」(青森)のみそ大根おにぎりまで個性あふれる人気商品を写真と共に紹介。巻末にはロゴマークセレクションやポリ袋など備品も掲載。全国から大集合した個性的なコンビニ、立ち寄りたくなること間違いなしだ。

(小学館 1760円)

「『駅そば』から広がるそば巡り」鈴木弘毅著

「『駅そば』から広がるそば巡り」鈴木弘毅著

 駅のそばには必ずと言っていいほど「そば屋」がある。気づいてしまえば、列車に乗る前、飛行機に搭乗する前など、「食べておこうか」となるのではないだろうか。著者はそんなそばを「旅そば」と名付け、北海道から沖縄まで著者が実際に訪れて「ここは!」と思う店を「空そば」「海そば」などジャンル別に紹介する。

 JR八戸線と三陸鉄道が接続する久慈駅にある「三陸リアス亭」のそばは、カツオと昆布の合わせダシの素朴な味わいが特徴。また人気のヒモやベロがついたままの大粒ホタテがトッピングされたほたてそばは、つゆにもじんわりと染み出るダシがたまらなくうまく、これぞご当地そば、と絶賛する。

 一方、バスターミナルの近くにあるそばは、おおむね地域密着型志向が強いという。岐阜県山県バスターミナルには、JAが運営する農産物直売所内に軽食堂「山県ごはん」があり、店のおすすめメニューは「美山バルバリー 鴨南蛮蕎麦」。つゆは濃い口醤油の関東風。関西に多い青ネギ、鴨肉は肉質が締まって噛みごたえあり、と東西折衷スタイルだとか。読むほどにそばが恋しくなる。

(交通新聞社 1100円)

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