「付き人のようにそばに」 秋野太作が語る故・渥美清との17年
香具師の世界で兄弟分といえば、肉親以上の強い絆で結ばれているわけだけど、それが仕事を離れた実生活でも続き、すっかり舎弟になりきっていました。
しかも、テレビ版「男はつらいよ」のロケでは、直前にせりふ合わせをしたのですが、私と渥美さんとで小さな控室にこもって2人っきり。共演していた時は食事も風呂も一緒です。
また、他人の演技について決して口出ししなかった渥美さんですが、私だけは別。「せりふを言うたびに首を振ってるぞ」「ポケットに手を突っ込むな」……。ロケのたんびに、いくつものクセを指摘され、その都度、矯正する。それを繰り返していたものです。
クセについては、それまで言われたことがなかったし、自分ではなかなか気づかないもの。ましてや渥美さんの指摘は的確でしたから、新人にとってはとてもありがたいことでした。
そして何より巧みな芝居や口上と、爆発的な瞬発力、切り返しで笑いを巻き起こすアドリブを目の当たりにできたのは長い役者人生の宝。それらが演技力をつける上でどれだけ役に立ったことやら……。