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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

ドラマ「刑事7人」 登場人物がステレオタイプで空回りの残念

公開日: 更新日:

 連載コラム【TV見るべきものは!!】

 これは一種の戦略商品だったはずだ。目標は、ヒットシリーズ「相棒」とは別タイプの刑事ドラマの創出。差別化のため、独自色を出すことに腐心している。

「相棒」の杉下右京(水谷豊)の武器が優れた推理力と洞察力だとすれば、「刑事7人」の天樹悠(東山紀之)のそれは“時間”へのこだわりだ。毎回、犯人をはじめとする登場人物たちの“空白の時間”が焦点となる。

 この設定自体は悪くない。天樹は、「4分の距離をなぜ15分かけて歩いたか」「自首するまでの2時間半は何をしていたか」といった疑問から解決の糸口を見つけていく。ただ、「これって当たり前の捜査の一環なんじゃないの?」と視聴者に思われてしまうところがつらい。天樹の能力が際立ったものに見えないのだ。

 もうひとつ残念なのが、他の刑事たちの造形。すぐに怒鳴る熱血漢(高嶋政宏)、空気が読めない帰国子女(倉科カナ)、引きこもりの分析屋(片岡愛之助)など、何とも古くて類型的なのだ。しかも、それぞれがバラバラに自己主張しており、キャラが空回りしている。

 このタイトル、やはり昭和の名作「七人の刑事」(TBS系)を連想してしまう。「七刑」の特色は、社会問題も取り込む懐の深さと、刑事たちを、悩んだり迷ったりする人間として描いた点にあった。さて、「刑7」はどこを目指すのか。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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