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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

テレ東「ナンカゲツマチ」とはいわば“深夜の和風総本家”

公開日: 更新日:

【連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 待つのが苦手なせいか、いわゆる「行列のできる店」に並んだことがない。ディズニーランドなどでは、待つこともイベントとして楽しむのがコツだという。要するに“待つだけの意味があるか”の問題で、それは待つ人のもつ価値観にも関わってくる。

 テレビ東京系で先月末から始まった深夜バラエティー「ナンカゲツマチ~よくそんなに待てますね~」が面白い。登場するのは、何かを手に入れるために、長い間ずっと待ち続けてきた人たちだ。

 たとえば、20万円の「世界に一台の手作りミニカー」を5年待った男性がいる。オスカードロモスという幻のスポーツカーの実物を入手したことを記念し、そのミニカーを発注したのだ。番組では制作者の精緻な仕事ぶりも見せてもらった。

 また、3年待ちで220万円の木製自転車も出てきた。ロードバイクと呼ばれる高速走行のための自転車だ。マホガニー製のそれは美しいだけでなく、性能も優れていた。簡単に入手できない商品や、待たされるサービスには、プロたちの卓越した技が潜んでいることがよく分かる。いわば“深夜の和風総本家”だ。

 スタジオ代わりの銭湯「松の湯」には、松嶋尚美、松井玲奈、クリス松村の3人と司会の松丸友紀アナウンサー。「松(待つ)」に引っかけた面々だが、感想トークの深夜らしい“ゆるふわ”な雰囲気が結構心地よい。

(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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