仕事過密でも黙々と 博多華丸・大吉こそサラリーマン芸人
【連載コラム 2016新春「笑」芸人解体新書】
サラリーマンが気楽な稼業だったのは大昔の話。国の成長はすっかり止まり、景気も良くなった実感が持てない昨今、サラリーマンはたとえ給料が上がらなくても会社にしがみつくしかない。
パワハラ、セクハラという言葉も認知されるようになり、中年男性が部下や女性社員に駄洒落を言ったりセクハラまがいの発言をしたりするのは完全にタブーになってしまった。「オヤジくささ」というものが、女性や若者にとって最も忌み嫌われる要素になっている。
ところが、日本でただ一人、これが許されている特別な人間がいる。それが博多華丸・大吉のボケを担当する博多華丸(45)だ。華丸は漫才の中で、典型的な中小企業のオヤジのようなキャラクターを演じることが多い。それは、多くの女性や若者にとっては、実際に身の周りにいたらとてつもなく厄介な存在に見える。でも、漫才の中ではそれが受け入れられ、大きな笑いを生んでいる。
「スピーチとスカートは短い方がいい」「酒のチャンポンと親の意見はあとから効いてくる」などと、ちょいウザなオヤジフレーズを堂々と口にする華丸が、なぜそんなに面白いのか? 漫才では、そこに彼の人柄がにじみ出ているからだ。華丸が演じるオヤジは、酒を飲んだりゴルフをしたりする日常を心から楽しんでいるのが伝わってくる。そして、華丸自身はよく見ると川平慈英似のなかなかのイケメン。お調子者だが憎めない、かわいげのあるキャラクターを確立しているのだ。