映画「亀岡拓次」のモデル 宇野祥平は6畳一間の居候が原点
脚光を浴びる主役ではないが、哀愁の漂う演技が人気で100本以上の映画に出演している。そんな名脇役の宇野祥平(37)は売れるまで、生花店の裏方、ボートレースの中継係、パチンコ店に建設現場、喫茶店などでのアルバイトで食いつないできた。
「何だっていい、手に職をつけなさい」って祖母に言われていたこともあって、高校を出てすぐ、働き始めました。最初は就職しましたが、すぐに辞めてしまい、花屋をやっている叔父の紹介で、別の花屋で働くことになりました。仕入れから搬入、掃除など裏方の仕事をしていました。花というと、オシャレで奇麗な印象があったんですけど、トラックから段ボール箱で搬入するのはとても重く、冬の水の冷たさといい、バラのトゲ抜きといい、大変な肉体労働でした。
住んでいた大阪から、京都方面の香里園という駅の近くにある店で、電車で通いながら、「オッチャン」と呼んでいた店主からもらった本を読んでいたときでした。花の本で、オッチャンが心から花を好きなんだなあと思ったんです。そのとき浮かんだのが、小さいころ、祖父に連れられた映画館のこと。旧作3本立てなどを大人たちに交じって見上げていて、「日本一!」と確か勝新さんに声が上がるのを聞きながら、スクリーンの向こう側にはすごいものがあると思っていた。