スタジオジブリ鈴木敏夫編<後編>初仕事が人生に影響与える
私は鈴木氏が怒ったのをほぼ見たことがない。弟子で元ジブリの石井朋彦氏が書いている。
「石井君、そんなに怒ってばかりいると疲れるぞ」「でも、あの人が悪いんじゃないですか!」。そういうと鈴木さんにこうたしなめられた。
「人生に本当に怒らなければならないのはせいぜい1年に1回か2回なの!」
そんな鈴木氏はあの「事件とヤクザとエロ」の雑誌「アサヒ芸能」編集部に3年間も居た。その間に経験した、生々しい、タブーな、地を這うような話が次々に私も同行したある取材で語られた。
「先日はありがとうございました。アサ芸時代の話をまとめて聞くのは初めてでしたが壮絶かつ貴重でした。やはりあの3年が今の鈴木さんにある意味、刻印を刻んでいるのでしょうか」とメールすると、「思い返して下さい! 学生から社会人になって初めてついた仕事がその人の人生に大きな影響を及ぼしているんです。吉川もテレビ局に入った当初経験したことが今でも影響しているんです」と強い調子で返信が来た。
これは教育的指導であったのか? 何かの教訓を与えてくれたのか……今となっては判然としないが、それは、最近では仙人化したかに見える鈴木敏夫さんの中にある、ある種の「激しさ」を感じた瞬間でもあった。鈴木さんの「だるまストーブ」的エネルギーはいまだに健在なのは確かである。