「サンセット大通り」が描く愛と栄光を求めた女優の末路

公開日: 更新日:

 一方、ギリスの才能を認める美女ベティ(ナンシー・オルソン)は彼に脚本を完成させて欲しいと要請。2人は深夜の事務所で原稿を書き始める。ノーマは嫉妬に狂い、ベティに嫌がらせの電話をかけるのだった……。

 人付き合いのない古い屋敷があると、中でどんな人間が何をしているのかが気になるものだ。本作はそうした謎の空間での若き脚本家と過去の栄光にすがる五十女の狂気じみた葛藤がテーマ。猿の死骸から屋敷の描写が始まるなど、ホラーの要素を含んでいるため、画面から目が離せない。

 ノーマは若い男の愛情を切望する。こうした熟女のご執心は歌謡曲や芸能ニュースの題材だ。森進一は「年上の女」で「放したくない つらいのよ」と歌った。13歳年下の夫に去られた小柳ルミ子に同情しながら「やっぱりこうなった」と呟いた人もいるだろう。

 女の愛憎と失望、栄光への執着は実にドラマチック。本作はその悲愴(ひそう)な断面を切り取り、意表を突いたラストになだれ込む。正気を失ったノーマを演じるG・スワンソンの表現力は怖いほどお見事。モノクロ映像の不気味さを際立たせている。

(森田健司/日刊ゲンダイ)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    野呂佳代が出るドラマに《ハズレなし》?「エンジェルフライト」古沢良太脚本は“家康”より“アネゴ”がハマる

  3. 3

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  4. 4

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

  5. 5

    ロッテ佐々木朗希にまさかの「重症説」…抹消から1カ月音沙汰ナシで飛び交うさまざまな声

  1. 6

    【特別対談】南野陽子×松尾潔(3)亡き岡田有希子との思い出、「秋からも、そばにいて」制作秘話

  2. 7

    「鬼」と化しも憎まれない 村井美樹の生真面目なひたむきさ

  3. 8

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 9

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方