巳之助と児太郎“平成代名残絵巻”で印象付けた世代交代宣言
夜の部最初の「実盛物語」は、片岡仁左衛門が2007年以来の主演。尾上菊五郎の孫(寺島しのぶの子)寺嶋眞秀が、太郎吉を演じている。最初から最後まで舞台に出ており、セリフも多く、子役としては大役だ。
仁左衛門は先月の「盛綱陣屋」では勘九郎の子、勘太郎と共演しており、2カ月連続して、自分の孫ではない子役と共演し、役者同士として正面から向き合っている。「芸の継承」がどうのという年頃ではないから、演じる感覚を、伝えようとしているのではないだろうか。70歳近い年齢差を感じさせない、真摯さがある。
昼の部には「坂田藤十郎米寿記念」と銘打たれた舞踊劇もあるが、中身は何もなく、チケット代を取って見せるものではない。長寿はめでたいが、祝いたいなら自主公演をすればいい。
(作家・中川右介)