毛穴にいい?「あの洗顔法」の真相を医師が解説。向いてる肌質もあるけれど…【美容のウソ・ホント】
普通の洗顔フォームじゃダメなの?
【美容のウソ・ホント】
SNSやYouTubeにさまざまな情報が溢れている昨今。美容について発信するアカウントも多く存在し、なかには同じテーマでも相反する意見を主張する人たちも。いったいどっちを信じればいいの?
そこで3人の医師に同じテーマを直撃。エビデンスや知見をもとに答えていただきました。今回は、【ベビーオイル洗顔】について伺います。
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2人の皮膚科医からの回答は…
数年前から市販の洗顔フォームではなく、ちょっと変わったものを使った洗顔を推奨している人を見かけます。今回取り上げるのは「ベビーオイル洗顔」。曰く、通常の洗顔フォームより肌に優しく、さらに毛穴が詰まらないなどのメリットがあると聞きます。
一方で、逆に毛穴が詰まるという真逆の意見をする人も。そこで肌の専門家である医師に伺いました。
【回答:△】敏感肌の人には良いけど…
もこスキンクリニック吉祥寺本院(東京都)
医療法人社団健麗会 理事長
高畠唯先生
界面活性剤は含まれておらず、保湿力に優れるため乾燥肌の方にはお勧めです。肌にも優しいので、乾燥肌や普通のクレンジング、洗顔料で肌が突っ張ってしまう方には良いと考えられます。
ただし毛穴つまりが生じてニキビができることがあります。油分が肌に残り、毛穴を詰まらせることでニキビの悪化につながったり、脂性肌の方だと余計にべたつきが気になる可能性あり。
また、長時間油分が肌に残ることで慢性的な炎症が引き起こされ、赤ら顔の原因になることがあるので注意です。
【回答:×】肌質や状況が限られる
山内皮ふ科スキンケアクリニック(福岡県)
院長
山内大輔先生
ベビーオイル洗顔が従来の洗顔方法よりも一概に「良い」とは言えません。 その理由は、ベビーオイル洗顔が適している肌質や状況が限られており、すべての方にお勧めできる方法ではないからです。
従来の洗顔料やクレンジング剤の多くは、界面活性剤という成分の働きを利用しています。界面活性剤は、水と油を混ぜ合わせる(乳化させる)性質があり、メイクや皮脂などの油性の汚れを水で洗い流せるようにする役割を担っています 。
一方、ベビーオイル洗顔は、ベビーオイル(主成分はミネラルオイルが多い)の油分そのもので、油性の汚れを溶かし、ティッシュなどで物理的に拭き取る、あるいは(困難ですが)洗い流すという方法です 。基本的に界面活性剤を含まないため 、洗浄のメカニズムが根本的に異なります。
界面活性剤は、種類や濃度によっては肌に必要な皮脂まで洗い流してしまい、バリア機能の低下を招く可能性が指摘されています 。ベビーオイル洗顔は、この界面活性剤を避けることで肌への負担を減らすという考え方に基づいているようです 。
しかし、ベビーオイル洗顔にも後述するようなデメリットやリスクが存在します。どちらの方法が「良い」かは、個々の肌質、メイクの習慣、そして何を重視するかによって異なると考えます。
山内医師の考える「メリットとデメリット」とは?
メリット
1. 肌への刺激が少ない可能性:
界面活性剤を使用しないため、肌のバリア機能に不可欠な皮脂や天然保湿因子などを過剰に洗い流すリスクが低いと考えられます。この点は、乾燥肌や敏感肌の方にとってはメリットとなり得ると解釈される場合もありますが、基本的にメイクを落とすことには向いていません。
2. 保湿効果が期待できる可能性:
洗顔後、肌にわずかに残ったオイルが水分の蒸発を防ぎ、しっとりとした感触を与える可能性があります。洗顔後のつっぱり感が軽減されるかもしれません。しかし、油分が皮膚に残存して酸化すると皮膚の炎症の原因ともなるため、すべての肌質で皮膚の保湿効果を期待できるわけでは無いと考えられます。
3. 毛穴の角栓への効果(限定的):
継続することで、オイルが角栓を柔らかくし、取れやすくするという報告もあります。また、残ったオイルが毛穴周りをコーティングし、新たな角栓形成を抑制する可能性も指摘されています。ただし、後述のように逆に毛穴を詰まらせるリスクと表裏一体です。
デメリット
1. 洗浄力が不十分であること:
ベビーオイルの洗浄力は比較的マイルドです。油性の汚れはある程度落とせますが、カバー力の高いファンデーションやウォータープルーフのメイク、ラメなどの不溶性の粒子は落としきれない可能性があります 。メイク汚れの残留は、肌トラブルの原因となります 。
2. 洗い流しにくさとオイルの残留リスク:
ベビーオイルは水を弾くため、水だけで完全に洗い流すのは困難です 。ティッシュオフが主な除去方法ですが 、オイルや汚れが肌に残りやすいという欠点があります 。
3. 毛穴詰まり・ニキビのリスク:
残留したオイル、特に主成分であるミネラルオイルは、肌に浸透しにくく 、毛穴を塞いでしまう(閉塞させる)可能性があります。これは、元々皮脂分泌が多い脂性肌の方や、ニキビができやすい方にとっては、症状を悪化させる大きなリスクとなります。毛穴ケア効果を期待する声とは裏腹に、皮膚科医としてはこのリスクを強く懸念します。
4. 摩擦による肌刺激:
オイルを塗布する際やティッシュで拭き取る際に強く擦ってしまうと、物理的な刺激となり、肌のバリア機能を損なう可能性があります。オイルの量が不足している場合も同様です。これは「肌に優しい」というメリットと矛盾しかねません。
5. 特定の肌質・状態には不向き:
上述の通り、脂性肌、ニキビ肌の方には推奨できません。また、脂漏性皮膚炎がある場合も、オイルが過剰になる可能性があるため避けるべきです。アトピー性皮膚炎など、皮膚疾患で通院中の方は、必ず事前に医師にご相談ください 。
6. アレルギー・接触皮膚炎のリスク:
「ベビー用」と名前が付いていても、すべての人に安全とは限りません 。ベビーオイル(ミネラルオイル)自体が肌に合わず、赤み、かゆみ、湿疹などを引き起こす可能性もあります。
試す場合の注意点とは?
また、山内医師は「もしベビーオイル洗顔を試される場合は、以下の点に十分注意してほしい」と言います。
オイル選びとパッチテスト
使用するオイルは、必ず化粧品グレードのものを選んでください。食用のオイルは肌トラブルの原因になるため絶対に使用しないでください。初めて使うオイルは、必ず腕の内側などでパッチテストを行い、赤みやかゆみが出ないか確認してください 。
正しい方法の徹底
●オイルはたっぷりと:摩擦を防ぐため、オイルは十分な量を使いましょう。
●絶対に擦らない:塗布時も拭き取り時も、肌を擦らず、優しく押さえるように行います。
●丁寧な除去:ティッシュオフは優しく、オイルと汚れをしっかり吸着させます 。オイル残りが気になる場合は、ぬるま湯で丁寧にすすぐ 、あるいは泡立てた洗顔料をごく短時間(例:3秒~10秒程度)だけ肌に乗せて洗い流す方法もありますが、洗いすぎには注意が必要です。
●肌状態の観察:少しでも赤み、かゆみ、ヒリヒリ感、ニキビの悪化などを感じたら、すぐに使用を中止してください。
●メイクをしている場合: 濃いメイクやウォータープルーフ製品は、専用リムーバーで落としてから行うか、ベビーオイル洗顔自体を避けることを検討してください 。
●安易に考えない: ベビーオイル洗顔は、誰にでも合う万能な方法ではありません。特に、脂性肌やニキビができやすい方は、リスクが高いことをご理解ください。
最後に「もしベビーオイル洗顔を試して肌トラブルが起きた場合や、ご自身の肌質に適しているか不安な場合は、自己判断せず、必ず皮膚科専門医にご相談ください 」ともお話しいただきました。
興味のある人は慎重に!
突飛で目新しい美容法を試してみたくなってしまいますが、安易に手を出す前に自分に合うかどうか、しっかり考えた方が良いようですね。
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(編集MS)
(コクハク編集部)