春風亭小朝 AKB48は噺家に欠ける部分を気づかせてくれた
ファンをどうつかむか 本当に苦しんで考えている
これは、われわれの世界にも共通するので、教えられちゃう。われわれ噺家って“ファンの心をつかむ”という意識はありません。落語を一生懸命やって、聴いて喜んでもらって、お客さんが増えていくんだけど、握手会があるわけじゃなく、「落語やってりゃいいんでしょ」って思ってる人のほうがはるかに多いと思います。
それに比べ、彼女たちは、どうつかむか、どうしたらお客さんが少しでも喜んでくれるか、本当に苦しんで考えている。彼女たちは噺家に欠けてる部分を持ってるな、と思います。彼女たちの生きざまを見せてもらい、気づかせてくれて、私の人生が豊かになったと思います。
私も入門して新人の頃、よく先輩方に「見る人は、見てるよ」と言われました。今、私が先輩の立場になってみると、そのとおりで、AKB48を見ても同じことを感じます。
「イヴはアダムの肋骨」をプロデュースした時、最後の曲にしたのが「君のことが好きだから」でした。これはAKB48グループを象徴する曲だと思うんです。
ファンの男の子の気持ちを歌った歌。歌詞のなかに“好きだ”という言葉がたくさん入っていて、私はこの“好きだ”という言葉が、“愛してる”より好きなんです。“愛してる”というのは西洋から入ってきた、神がかった完結した言葉。それに比べ“好き”という言葉は庶民的で、“大好き”と言ってみたり、“すごく好き”と言ったりもできる。
“好き、好き”と何度も聞いていると心が揺れますね。
■推しメンは?
私が推しているメンバーは岡田奈々さん、岩立沙穂さん、村山彩希さん、卒業した小嶋真子さん、姉妹グループのSKE48だと大場美奈さん、江籠裕奈さん……。
器量がいいとか、彼女たちのグッズを持っているということじゃないんです。誰も見てなくても、とにかく頑張るぞって人たち。
彼女たちの頑張りによっては、AKB48は変わる可能性があります。
(聞き手=中野裕子)
▽しゅんぷうてい・こあさ 1955年、東京都生まれ。70年、春風亭柳朝に入門。80年、36人抜きで真打ち昇進。落語界初の日本武道館公演を成功させ、近年は文豪・菊池寛の作品を落語にして口演するなど常に新しい企画に挑戦している。俳優としては「三匹が斬る!」(テレビ朝日系)やNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などで活躍。2014年度芸術選奨文部科学大臣賞など多数受賞。