東出&唐田共演「寝ても覚めても」は大人が楽しむ不条理劇

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 公開時、40代の女性に感想を聞いたら「同じ女性として朝子の行動にイラッとくる」と批判的だった。気持ちは分かるが、恋愛は理屈ではない。男も女も恋心という難物に巻き込まれると気持ちがぶれるもの。ヘンリー王子騒動で注目のエドワード8世もしかり。人妻に懸想して王位を捨てた。柳原白蓮は年下の男と出奔した。世の中には自分の意思で恋人と別れながら、未練ゆえに幾度も復縁を迫る女が存在する。生まれて初めて好きになった男は簡単に忘れられないらしい。

 筆者のように年を取ると、こうした珍現象を責めるより、若いころの失恋経験を思い浮かべて、「人生はドラマチックだぁ」と感動するほうが楽しい。そういう意味で本作は、若者が演じた大人のための不条理劇だ。

 朝子の行動は一途な恋に自己マインドコントロールされた者の素直な感情の発露だ。だから道を踏み外す。だから憤怒を浴びる。だから人間は面白い。 

(森田健司/日刊ゲンダイ)

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