渋谷ロフトヘブンでコロナ感染者が…潰れることも覚悟した
役員は全員が悲痛な表情をしている。暗い。
「ところで全店(12店舗)休業で50人以上いる社員、アルバイトを含めると150人以上の契約社員の人件費、家賃の支払いなど……どのくらいの赤字になるの?」と経理の担当役員にただした。
「家賃だけで新宿ロフトが370万、下北沢シェルターが130万など合計で毎月1300万円ほどかかります。このままだと月に5000万近くの赤字が見込まれ、会社を維持できるのは3カ月が限界です。出費を極限まで抑えたい。社員を含めたリストラや赤字店舗の撤退も……」という案が出された。
「会社が持ちこたえるために賃金労働者は失業にも我慢しろ――という資本主義の鉄則なんて嫌だな。断固、解雇はしたくない」と私は言った。
■平野個人商店
ちょっと前までロフトは「平野個人商店」だったが、いつの間にかグループ全体で年商十数億円の中小企業になってしまった。音楽やトークを心の底から愛し、小さな空間から生まれる新しい時代のワンシーンを見守る。そんなことをテーマにしながら生きてきたが、多店舗経営というのはそういった<創造>を破壊することなのか? そんな思いにとらわれた。