映画「SKIN/スキン」が活写するアメリカの根深い差別問題
新型コロナウイルス感染症と自粛期間の影響により、外食産業とともに大きなダメージを受けたのが映画業界。街の映画館は徐々に再開しているが、新作も公開延期を余儀なくされ興収も壊滅的だ。
ところがそんな中、公開時期の変更により逆に注目が集まった作品が。ある差別主義者の転落と再生を描いたドラマ「SKIN/スキン」がそれだ。この映画の公開日は5月上旬だったが、緊急事態宣言を受け6月26日に延期されてしまった。ところがその直後、5月25日に黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害され、抗議活動と暴動が全米に広がる大事件が起きた。これが劇中のテーマとあまりに符合していることで話題になっている。映画批評家の前田有一氏がこう語る。
「白人至上主義者と、黒人などアンチファシストの抗議者たちが路上で激突するシーンがありますが、デモや集会が何かの拍子に暴力的になり、際限なくエスカレートする恐怖を見せつけられます。その迫力たるや、今アメリカで起きている暴動のニュース映像そのものですが、それもそのはず。本作は実話がもとになっていて、背景には2017年に死者まで出したユナイト・ザ・ライト・ラリー(極右集会)など、現在の騒動にも通じる米国の根深い差別問題が描かれているのです」