立川談志は「講談の時代がくる」と予言した
「この場合のモラルは庶民の哲学といわれた石田梅岩(江戸時代の思想家)を筆頭とする心学や儒学、仏学がベースです。押しつけがましくなく、人の生き方を説く。それをお説教としてやるなら面白くないけど、物語としてやるから面白い。その方が人の記憶に残るし、教訓になる。なんといってもお客さんが喜んで聞いてくれます」
続けて言う。
「今は狂乱の世の中で、ヤクザより悪いコトする堅気が山ほどいる。多くの人が正常な人間に戻ろうと思う世の中では講談がもてはやされるということじゃないですか。それを見通していた談志師匠は天才です。6代目神田伯山も談志師匠に刺激を受けたひとり。落語よりもこれからは講談だと言って入ってきた。講談をやりたいという弟子は私にとって宝物です。業界の宝として育てたい」
(構成=浦上優)