高橋伴明監督「痛くない死に方」終末医療の現実と理想の死
「長尾先生からは、たくさんのことを学ばせていただきました。手術や延命措置はいらないと病院に意思表明すると『標準治療』の拒絶となり、入院させてもらえなくなったり、受け入れられても、入院患者を2~3週間で退院させないと病院は減収になり、それまでに追い出そうとしているところもある等々。同時に、病院のカルテやマニュアルではなく、患者さん自身を見て、人間として寄り添う先生の姿から、明るい希望のようなものを見た。幸せな死に方というのもあり、それを選べるのだと知りました」
――本木雅弘の企画主演作「おくりびと」は納棺師でしたが、本作では看取り人である在宅医を主人公に据えていますね。
「長尾先生の著書『痛くない死に方』『痛い在宅医』が今作の原作で、主人公が師事する奥田瑛二演じる先輩在宅医は、長尾先生をモチーフにさせていただいたものですから。ただ、大変な現場や問題点を描くばかりでは、おもしろくない。死は重いテーマですが、映画ですから楽しくなければならない。その上で深く考えていただけるよう構成しました。最後には理想の死に方の一つを提案したつもりです」