今いくよくるよは大物俳優のオファーより観客を大事にした
私事で恐縮ですが、13日に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)におこがましくも出演させていただいた際の映像で「今くるよ」という看板を見て、もう30年近く前におふたりから伺った“もったいない”話を思い出しました。
ひとつは渡哲也さんが主演されるお正月の「時代劇スペシャル」のオファー。「20日間のロケスケジュールをいただけませんか?」と打診があった。当時、人気絶頂でテレビ、ラジオ、劇場、営業などで1年先までスケジュールが埋まっていて、どう頑張っても調整できるような状態ではなく、先方から「それでは15日で? 10日で? 5日で?…」、最後は「1日だけでも」となったそうですが、その1日さえも地方の営業が入っていて「看板のいくよくるよを外すわけにはいかない」と、やむなくおことわりすることに。
また、同じ頃に高倉健さんの自動車のCMに(高倉)健さんから「いくよくるよさんがいいんじゃない」という直々のオファーが。CMはアメリカロケで最低でも5日間必要という。とても5日間を空けて新たにスケジュールを入れられるはずもないということで、マネジャーがおふたりにお伺いを立てることなくおことわりしたそうです。当時のいくよくるよさんといえば漫才では阪神・巨人さんと並ぶ超人気芸人。希少な女性コンビということで華もあり、営業には欠かせない存在。宣伝ポスターが張られまくり、遠くからお年寄りも足を運ぶほどお客さんが待っていますから、絶対に穴をあけるわけにはいきません。日々忙しく新幹線の移動中に私が同乗し、ネタの打ち合わせをするほどでした。そんなハードスケジュールでも、後輩を見れば「ご飯行こか」とごちそうしてくださるのです。