山口洋子が店を閉めて結婚を考えるほど惚れ込んだ野球選手「F」とは誰か
1960年代前半に「プロ野球選手F」と恋に落ちた山口洋子は、あろうことか結婚を望むあまり、銀座から身を引こうと考えた。それでも、店を売ることまではせず他人に貸した。相手は顔見知りの中国人で期間は2年間。「姫」の歴史において2年間も店を閉じていたのは、往時の顧客を除いて意外に知られていない。
■空白の2年間
結婚をするつもりなら、経営権を売り払う選択肢もあったはずだが、そうはしなかった。おそらく心のどこかで「この私に幸せな結婚生活など送れるはずがない」と半信半疑だったのかもしれない。事実《自分でもそのときの心理は謎としかいいようがない》と、自伝でさらりと書いている。店の権利まで売らなかったのはすなわち「一応、帰る場所は確保しておくのが無難だ」と保険をかけたということだ。
1970年に山口洋子を取材した女性誌は、その恋人Fを「中日ドラゴンズに所属していた」と書き、当の洋子は「東の長嶋、西の――と囃された花形エース」と書いた。中日球団のOBでFのイニシャルの付く選手は25人。その中から、山口洋子が出会ったとおぼしき時期に在籍する投手はすぐに絞られた。特定するのはたやすいと思われた。該当するのは次の2人である。