<115>「アプリコ」閉鎖、従業員たちは給料1カ月分の上乗せで解雇された
■在庫は投げ売り
アプリコの閉鎖が決まり、従業員たちは在庫整理のためにお酒の投げ売りをすることになった。会社脇の大きな倉庫に見上げるばかりに積んであったお酒の在庫も、原価程度で投げ売りされた。私からすればむちゃくちゃであるが、投げ売りしても会社を潰したい人たちの懐が痛むわけではなく、したい放題なんだな、と憤っていた。早く早貴被告をアプリコの代表に据えて会社を閉鎖させて、遺産分割を終えて彼女が取り分を手にすれば、そこから成功報酬を受け取れる。それが彼女サイドの目的だとしか考えられなかった。
アプリコの店じまいの広告が地元夕刊紙の紀伊民報に載るやいなや、目端の利く市民たちは倉庫に群がり、年代もののウイスキーはもちろんワイン、リキュールの類いまで飛ぶように売れた。結局、若い従業員たちは退職金代わりに1カ月分の給料が上乗せされた金額を支払われただけで18年7月31日に解雇され、酒の販売は終了してしまったのである。
「吉田とは会うな、しゃべるな」
弁護士は事あるごとに早貴被告や番頭格のマコやん、そして金庫番の佐山さんにクギを刺していたようだが、私はみんなと連絡を取っていたし、食事にも行っていた。そして私は月命日にドン・ファン宅でお線香を上げるのをやめることはなかった。=つづく