海老蔵×キンコン西野「プペル」はまともな新作歌舞伎になっていた
前半、抽象的と写実を混ぜ合わせて「護美人間」が生まれるところは、歌舞伎の技法でありながら、これまでの歌舞伎にはない表現で斬新。後半はドラマをしっかりと描く。
原作とは芯の部分は同じだが、大胆に変えている。原作者自身の脚色なので、かえって遠慮なく変えられたのだろう。公演が発表になった際はどんなものができるのか危惧したが、まともな新作歌舞伎になっていた。
歌舞伎座の正月公演はこれまで松本白鸚と中村吉右衛門が中心の座組みだったが、今年は2人とも出ない。白鸚は2月に「ラ・マンチャの男」のファイナルが控えているので、その稽古なのだろう。
完全な代替わりの象徴が、第1部。「一條大蔵譚」は勘九郎が家の芸を、歌舞伎座で初めて演じた。「祝春元禄花見踊」は中村獅童の子、小川陽喜の初お目見えのためのもの。
第2部は幹部役者による「三番叟」と「萬歳」のあと、松本幸四郎の「艪清の夢」。「仮名手本忠臣蔵」の五段目や「廓文章」などのパロディーがふんだんにある喜劇。話としては他愛もないものなので、いかに笑わせるが勝負で、幸四郎に向いているし、実際に好演。錦之助は気の毒な役ではあるが、しっかりと笑わせていた。コロナ禍でなければ客席ももっと沸いただろう。