引っ越して半年で実感…鎌倉のえもいわれぬ空気は“市民の努力”が支えている
鎌倉に引っ越してきて半年が経った。まあ毎日芝居の稽古や本番で都内に通っていてじっくり鎌倉を散策する余裕もないが、それでも鎌倉の良さ、醍醐味、欠点なども見えてきた。
まず海風が山に当たって下りてくるので夏の湿気がすごい。私は山側なので革製品などすぐにカビが生える。一方海側は潮風の塩害で自転車などすぐにさびるそうだ。海からすぐに山々が連なっているから坂が多い。土日は観光客の車で大渋滞になり、バスも時間通り来ない。
しかしそれを補って余りある自然の美しさと鎌倉ならではの古都の空気感がある。先に挙げた欠点も実は便利さや利益を追求した開発が行われず、地形が昔のままだから生じることだ。
鎌倉のお菓子に「鳩サブレー」があるが、先日あるニュースを見た。由比ケ浜、材木座、腰越の海水浴場の清掃代などを捻出するために、鎌倉市が10年前にネーミングライツを募集した。要するにスタジアムなどに企業がお金を出し命名権を得る。味の素スタジアムなどが良い例だ。
しかし海水浴場のような自然の地形にネーミングライツが使われるのは珍しい。危惧したのは鎌倉育ちの鳩サブレーの豊島屋の4代目社長だ。昔から慕われた名前がなくなってしまう。先代に「無駄遣いさせてくれ」と言って命名権を年間1200万円で買い、商品名など付けることなく、そのままの名前で10年間守った。