まさに中学受験? 大企業があげる過去最高益と危機的な生活苦が同時発生する現代ニッポン
見慣れない四字熟語のインパクトに惹かれ、書店でこの本を手にとった。やはりタイトルの力って大きいなぁ、としみじみ。教育ジャーナリスト・おおたとしまさの新著『中受離婚』(集英社)のことである。もちろん「離婚」は分かる。では「中受」の2文字は何を意味するのか。骨身に沁みるほど知る者が「ああ……」と言葉にならぬため息をつく一方で、わからぬ者はもう何が何やら、手がかりの尻尾さえつかめないのではないか。
答えはサブタイトルにある。「夫婦を襲う中学受験クライシス」。そう、中受は中学受験の略称。この本は子の中受を機に離婚という人生の選択を突きつけられた夫婦3組のセミフィクションなのだ。セミというのは実話ベースだから。著者は実在の3組の夫婦と子どもを徹底的に取材したうえで、高いリーダビリティ獲得の手段としてフィクションの体裁をとったというわけだ。
まずぼくも立ち位置を明示しよう。中受、経験してます。誰がって自分が。40年以上前の地方都市の話だけど。ただ自分の子どもたちは中受とは縁のない人生を歩行中。ゆえに「中受の親」の気持ちを理解しているとは言えません。それでも首都圏の中学受験が過熱している現況は、ヒィーと悲鳴を上げている知りあいの夫婦たち(ひと組やふた組ではない)を通して伝わってくる。事実、首都圏模試センターによれば、2023年の私立・国立中学受験者数は過去最多の5万2600人、受験率も過去最高の17.86%だという。中受と縁遠い世代や地域にお住まいの方がたには驚きの数字ではないだろうか。