大企業があげる過去最高益と、危機的な深刻さではびこる生活苦が同時発生する現代ニッポン。中学受験? へー、義務教育なのに結構なご身分じゃねえかと悪態をつきたくなる人もいるかもしれない。だが受験生の親たちすべてが精神的あるいは経済的に余裕があるばかりでもない現実も、著者は書き漏らすことがない。そのうえで、家族やパートナーとの関係性において分化度(自己分化度)を高めることの肝要さを丹念に説く。あとがきの「夫婦関係の終了が人生において必ずしも負を意味しない」という一節にたどり着くとき、中受にかぎらず憂きこと多き現代人の心は少し軽くなっているはずだ。