まさに中学受験? 大企業があげる過去最高益と危機的な生活苦が同時発生する現代ニッポン
メディア露出が多く、テレビで軽妙なトークを披露することもある著者には、これまでも大きな信頼を寄せてきたが、単著を購入して読むのは初めて。結論から言うと、これは面白くてためになる本です。多芸多才のおおたさんは小説を書く心得もおありだとみた。
ネタバレにならないように帯の文言を以下引用する。まずは表紙面から。「夫婦関係を犠牲にしたら、子どもは第一志望に合格する/そんな取り引きがあったら、どうしますか?」。そして裏表紙面には全3章の紹介文がある。「合格から逆算し受験をプロジェクト化する夫、わが子を褒めることができない妻」「受験への出費をいちいち渋る夫、受験伴走も仕事も下の子の面倒もワンオペする妻」「夏期講習よりもサマーキャンプを優先したい夫、夫を透明人間のように扱う妻」。
紹介文を読むだけでお腹いっぱいと敬遠する向きがあるかもしれないが、各章末に「解説」と銘打たれたページが整腸薬の働きをしてくれる。この配慮はじつに心憎い。心理カウンセラー経験を持つ著者の、より肉声に近い語りが聞こえてくるようだ。巻末の略歴によれば、おおたさんは1973年東京都生まれ。男子御三家として名高い麻布中・高を卒業した後、国立と私立の大学で学び、リクルート勤務を経て独立。中高の英語教員免許や私立小非常勤講師の経験まであるのだから、そりゃあ説得力も半端ないわけだ。