坂本冬美さん明かす ヒット曲『夜桜お七』誕生秘話と「何かが違う」と焦った2012年の紅白
「紅白で2回も歌詞を間違えたのは私くらい」
そんな大切な「夜桜お七」なのに、痛恨のミスもやっています。これまで歌った9回の中で、実は歌詞を間違えたことがあるんです。2012年の第63回大会で5回目の「夜桜お七」を歌いました。
1番の歌詞「置いてけ堀をけとばして」のところを2番の歌詞「たいした恋じゃなかったと」と歌ってしまいました。私には何の違和感もなくスッと出たけど、「あれ、何かが違う」と思いつつも、もう止められないし、とにかく歌いながら何が何だかわからないまま歌い終わった。戻って「私、何かやっちゃった?」と聞いたら、スタッフに「やっちゃいましたね」って言われて真っ青です。あの時のゾッとした思いは今も忘れられません。
ただ、それに懲りたかといわれれば、実はもう一度……。14年、65回大会では「男の火祭り」を歌いました。「身を粉にして」を一字違いの「身を焦がして」と歌っちゃったんです。この時も「何か違う」と思いながら最後まで歌いましたが、紅白の大きな舞台で2回間違ったのは私くらいでしょう。
「夜桜お七」はスローで幻想的な出だしから、桜が満開に咲き誇り、夜桜になって花が散るという歌詞です。これは私たちの人生とか恋愛に重ね合わすことができます。穏やかな時もあれば咲き誇る激しい時もある、だけど、最後は潔く散っていく、というような。
■紅白の風物詩を目指します
「夜桜お七」が作られたのは今から30年前。いろんな方とコラボし、アレンジしていただくことで30年たっても色あせることなく、生き続ける歌だなと思っています。そして人生を歌った北島三郎さんの「風雪ながれ旅」や「まつり」、石川さゆりさんの「天城越え」や「津軽海峡冬景色」のように、坂本冬美といえば「夜桜お七」と言われるような紅白の風物詩になれたらいいな。昨年で9回目ですが、次は10回目の「夜桜お七」、さらに先輩方の歌のように紅白の風物詩になるぞって思いながら頑張りたいですね。それが三木先生への恩返しにもなります。
今月21日には新曲「ほろ酔い満月」を発売しました。'80sテイスト歌謡曲と今を意識したちょっぴりレトロな令和歌謡曲がテーマです。
元日に起きた能登半島地震では、同じ家族でも一つ間違えば命を落とすような現実を目の当たりにしました。本当に胸が痛くなりました。生かされている者としては今を本当にありがたく、精いっぱい生きなければいけないと思っています。
毎年新曲を出させていただき、コンサートを開くこともでき、劇場公演もありました。昨年は何年かぶりにドラマ出演することもできました。次は60代になっても元気に歌が歌えることを目標に頑張っていきます。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)
※2月20日、新曲「ほろ酔い満月」のリリース記念イベントが都内のライブハウスで行われ、DJにチャレンジ。DJフクタケを見ながら、「夜桜お七」と「蛍の提灯」をノリノリでつなぎ、「ほろ酔い満月」はDJフクタケの特別リミックス版を披露した。