「内なる偏見に気づいたら是正しよう」を否定する人はそういないはずだが…
新しい気づきを与えてくれたこのラジオCMにぼくは感謝したいくらいだが、ネット上では内容を糾弾する声が少なくない。社会にはびこる悪意なきステレオタイプを恣意的に利用して「あなた間違ってますよ」と指摘するのは誘導が過ぎる、という言い分がどうやらあるらしい。メッセージの本質である「内なる偏見に気づいたら是正しよう」を否定する人はそういないはずだが、誤解も温度差も生み出さずに伝えることの難しさよ。
■新作映画『アメリカン・フィクション』でも
日本時間3月11日発表の第96回アカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネートされた新作映画『アメリカン・フィクション』もまた〈悪意なきステレオタイプ〉に一石を投じる作品だ。劇場公開がない日本では2月27日からアマプラ配信が始まった同作をさっそく観てみた。
主人公は、名門ハーバード大学出身で売れない純文学を書いてきた黒人作家。差別発言が理由で大学の教授職をクビになったうえ、認知症を患った母親の施設入所のために大金が必要になり、半分ヤケで黒人のステレオタイプを露悪的に取り入れたインチキ自叙伝を書いたら、想定外のベストセラーになってしまってさあ大変、があらすじ。