森永卓郎さんの覚悟は古賀茂明さんのそれと相似形 胸の中で「I am MORINAGA」を掲げてみる
メディアのタブーに触れる覚悟
『書いてはいけない』は全4章の構成。第1章から綴られるのは、先述の3つのタブー。つまり〈ジャニーズ問題〉〈財務省のカルト教団化〉〈日本航空123便墜落事故〉について。それぞれに1章ずつを割き、ファクトと問題点の双方を平易な語り口で説明していく。第3章を読み終えた時点で、読者は3つのタブーを支える構造が相似形だという著者の指摘に大いに納得するだろう。
そして第4章「日本経済墜落の真相」。本の副題ともなっているこの章で、著者は日本経済転落の理由を、財務省の財政緊縮政策と、日航123便墜落事故に起因する形で日本が経済政策をアメリカ任せにしたことの2つに求めている。その話運びはロジカルなのにスリリング、ゆえに怖ろしくもあった。筆の力!
日本もう無理じゃん。多くの読者が抱くであろう諦めに対しても、森永さんは処方箋を用意している。〈あとがき〉には「ジャニーズ問題のときのようにメディアが動いてくれさえすれば、事態は変えられるのではないか」とある。ジャニーズ問題の風化に加担するような最近のメディアのへっぴり腰に呆れているぼくとしては、森永さんの意見に首肯するのはいささか躊躇してしまうのだが、財務省と日航機墜落事故への言論統制はその比ではないということもよくわかった。
メディアのタブーに触れる覚悟。連想するのは、2015年1月、元経済産業省キャリア官僚の古賀茂明氏がコメンテーターを務めていたテレビ朝日「報道ステーション」で掲げた「I am not ABE」だ。古賀さんの覚悟と森永さんのそれはまさに相似形ではないか。ぼくもいま胸のなかでそっと「I am MORINAGA」を掲げてみる。TVカメラに向かってではないけれど。
最後に、本のなかの〈松尾潔〉について。なんと9ページもの長さにわたって紹介されたり、コメントが引用されたりしていた。はたしてどんな文脈で出てきたか。書きだしはこうである。
「2023年6月30日に音楽プロデューサーの松尾潔氏が、15年間所属したスマイルカンパニーという事務所を突然退所した。いつも理路整然としたコメントをする松尾氏を、私は好感を持って見ていた」
あ、褒められてるぞ。どうにも面映いが、その先に続く文章への警戒心も高まる。素直に喜んじゃっていいのか? さて──このあとは実際に本を手にとってお確かめいただきたい。