著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

じつにカッコいい。人生の成功者・島田雅彦さんのいるところ、何かが起こる。

公開日: 更新日:

 本連載の初回は2022年9月。そこに登場したのは、入稿直前の夜にたまたま新宿の酒場で出会った中森明夫さんと島田雅彦さんだった。いま56歳のぼくに大きな影響をあたえた60代男性文筆家は少なくないが、中森さんと島田さんが自分にとって特別なのは、おふたりは〈書くひと〉でありながら〈話すひと〉としてもたいへん魅力的だから。彼ら〈話す〉〈書く〉二刀流の達人たちには共通点がある。それは、ふたつの刀いずれもの特性を知悉していること。身近なところで言うなら、ヤッシーこと田中康夫さんもそうだ。

 ぼくたちがふだん〈話し言葉〉〈書き言葉〉と言い慣わしているように、コトバにはふたつの顔がある。哲学をかじったひとなら、パロール(音声)、エクリチュール(文字)というフランス語を思いだすかもしれない。古代ギリシャきっての天才おじさんことプラトンの考え方(「階層秩序的二項対立」と言ったりしますね)が支配的だった時代はずーっと、パロールのほうがエクリチュールより上とされてきた。

 それってどうなのよ? 上とか下とかある? と異を唱えて熱烈な支持を得たのが、ジャック・デリダ。昭和ヒト桁生まれにあたるこのフランスのおじさんは、ぼくが学生だったころ、つまりバブル期に現役スター学者として大人気でブイブイ言わせてました(死語ですね)。彼のそんな考え方には「脱構築」という日本語があてられた。この三文字に抗いがたい魅力を感じる若者は結構いたものです。ダツコーチク、と実際に口に出してみるとわかるのだが、この言葉にはちょっとクセになってしまうような魅力がある。おそらく脱構築そのものより、「ダツコーチク」と口にしてる自分にうっとりしていたところも大きかったのかも。どうなの、当時の若者よ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  2. 2

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ

  5. 5

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  1. 6

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから 

  2. 7

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  3. 8

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  4. 9

    永野芽郁&田中圭「終わりなき不倫騒動」で小栗旬社長の限界も露呈…自ら女性スキャンダルの過去

  5. 10

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  2. 2

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    気持ち悪ッ!大阪・関西万博の大屋根リングに虫が大量発生…日刊ゲンダイカメラマンも「肌にまとわりつく」と目撃証言

  5. 5

    オリオールズ菅野智之 トレードでドジャースorカブス入りに現実味…日本人投手欠く両球団が争奪戦へ

  1. 6

    阿部巨人が企む「トレードもう一丁!」…パ野手の候補は6人、多少問題児でも厭わず

  2. 7

    乃木坂46では癒やし系…五百城茉央の魅力は、切れ味と温かさ共存していること

  3. 8

    初日から無傷の6連勝!伯桜鵬の実力を底上げした「宮城野部屋閉鎖」の恩恵

  4. 9

    新潟県十日町市の“限界集落”に移住したドイツ人建築デザイナーが起こした奇跡

  5. 10

    トランプ大統領“暗殺”に動き出すのか…米FBI元長官「呼びかけ」の波紋