【追悼】曙太郎(下)仕掛け人が明かす「K-1」に電撃転向した3つの理由と貴乃花への絆
その後もK-1のリングに立ち続けた曙だったが、結果は芳しいものとは言えず、角田信朗に判定勝利を収めた以外はすべて敗北。総合格闘技ルールにおいてもホイス・グレイシー、ボビー・オロゴン、ドン・フライに立て続けに敗れるなど、転向は成功とは言い難かった。しかし、バックヤードに現れた彼を見た筆者は、意外にサバサバした彼の様子を感じ取ってもいた。「チケットを売り歩くことを思えば、何のことはない」と思っていたのかもしれないし、何より、自由を謳歌していたのではないか。
K-1転向後、角界関係者との縁はほとんど切れたかに見えたが、唯一切れなかったのが貴乃花との絆だった。
K-1創始者の石井和義は、曙対ボブ・サップのゲスト解説に、当時、一代年寄として相撲協会に残っていた貴乃花親方にオファーすると、意外なことに快諾されている。そこには、相撲協会も屈服させられるほどの、斯界の実力者の示唆もあったというが「それだけでもなかったはず」と筆者は思う。
長年のライバル関係で培われた友情、長野五輪の開会式で、土俵入りの代役を買って出てくれた恩義、これらを貴乃花は忘れていなかったとするのは、当たらずとも遠からずではないか。