警察官80人の厳戒態勢の中で羽生善治と畠田理恵が挙式
羽生は当初、さすがに緊張したのか硬い表情だったが、報道陣と言葉を交わすうちにいつもの淡々としたペースを取り戻す。中央に陣取れず、隅にいたカメラマンから視線を求める悲鳴のような声がかかるが、羽生はにこやかに「ちょっとお待ちください」となだめながら、悠々とさばく余裕もみせた。
2人は将棋会館に場所を移し、記者会見に臨んだ。結婚についてのありがちな質問がすんだところで、ワイドショーのリポーターは誰もが聞きたかった羽生の髪の寝ぐせについて突っ込む。
すると、畠田はこらえきれずに笑い出す。羽生がそれに憮然とした表情で、「笑うことないでしょ」と返す。会場は笑いに包まれた。羽生は「寝ぐせは独身時代で終わりにします」とキッパリ。終始なごやかな雰囲気の会見だった。
このなごやかな挙式の裏で畠田が悩まされていた一連の事件。前年の婚約発表直後から彼女の元には「羽生と別れろ。さもないとひどいことになる」といった脅迫状が次々と届いていた。そして挙式の約1カ月前の2月19日に畠田は東京駅で見知らぬ男に腰を蹴られ、尾てい骨骨折が疑われるひどい打撲傷を受ける事件に見舞われた。1日入院し、その心労からかしばらく神経性胃炎に悩まされたりもした。警察の厳戒態勢はこれを受けてのものだった。