肝臓がん手術の権威が語る「医者は失敗から何を学ぶべきか」
その男の子には3つの巨大な腫瘍があり、それらは切除が困難な場所にあった。
大量出血の危険があると予想し、慎重に止血して肝臓にメスを入れたのですが、予想以上に血管内の圧力が高まっていた。メスを入れた途端、大量の血が噴き上がったんです。あぜんとしました。これはやばい、死んでしまうかもしれない。その場にいた別の教授が大動脈を遮断し、出血は収まり、幸いにも男の子の命は助かりましたが、この失敗で私が学んだのは、一度間違えたら二度と間違えてはいけない。そのために対策を講じなくてはならないということです。
新しいことにチャレンジし続けないと、医療は進歩しません。そして手術はやればやるほど、難しくなっていく。すると、どうしてもリスクはつきまといます。
しかし、医者には1回の失敗だが、患者さんには全て。失敗を繰り返さないためには、経験を次につなげることが重要なんです。だから、失敗は自分のことだけでなく人がしたことも覚えていなくてはならない。自分ならどうするか、と考えるのです。