盲腸の意外な役割 切ると消化器がんになりやすいのナゼ
盲腸というのは大腸の一部で、そこから出ている紐のような部分を「虫垂」と呼んでいます。この虫垂が炎症を起こしてお腹が痛む病気が「虫垂炎」(盲腸)です。虫垂炎になると、重い状態でなければ抗生物質で様子をみることも多いのですが、以前は手術で虫垂を切除することが普通でした。虫垂は不必要な部分と考えられていたので、健康な虫垂を切除することさえあったのです。
それでは、虫垂は本当に必要のない部分なのでしょうか。実は「虫垂には腸内細菌を保持するような作用があり、腸の健康を守っているのではないか」という考え方が最近有力になっています。
これが本当であるとすると、虫垂を取ってしまうことによって、胃腸の免疫力が低下して、がんが増えるのではないでしょうか? これまでにそれを調査した大規模なデータがいくつか発表されています。比較的古いヨーロッパの研究では、「虫垂を取ることにより胃がんが増えた」という結果が報告されています。2015年の台湾での研究では、「胃がんは増えずに大腸がんが増えた」という結果でした。新しい16年のスウェーデンの研究では、今度は「大腸がんは増えずに、食道がんだけがやや増えていた」という結果になっています。
このように、報告によっても結果は異なっているので、まだどちらとも言えません。ただ、虫垂を手術で取るのはそれが必要な時だけにした方がいいようです。