声帯を削った昆夏美さん「新しい喉で新たな可能性を」
慌てて有名な喉の病院に行くと、「声帯結節です」と告げられました。それでも、点滴と薬と吸入で1カ月の公演は乗り切りました。
翌月は丸々お休みだったので、その間に病院と薬と吸入と筆談の日々で声を戻し、8月から「ミス・サイゴン」の稽古に入りました。でも、従来のようには歌えなかったんです。
それなりに声は出るものの、一本線を描くような真っすぐな声が出ないのです。それでも稽古を続けていると、ある時「まずい!」と直感した日がありました。「これ以上、一音でも出したら声が飛ぶ」という感じです。翌日、病院を替えて受診したところ、「こんな喉で歌なんて歌えない」と即刻ドクターストップがかかりました。
結局、本番を目の前にして休演が決定。でも完全な降板ではなく、「12月公演から復帰すればいいね」と制作の方が言ってくださったので、私はそれを唯一の励みに治療に入りました。
外出は一切せず、ひたすら病院と薬と筆談で養生しました。でも、2週間目に喉を診てもらっても回復が見られず「手術しかありません」と言われてしまいました。手術をしたら12月復帰は無理。それはまさに“絶望”でした。