声帯を削った昆夏美さん「新しい喉で新たな可能性を」
念のため、元の病院にも行きましたが、結果は同じ。ただ手術後の対処が大きく違ったんです。片方は術後3週間は絶対沈黙。もう片方は絶対沈黙は3日間だけで3週間後には歌い始めていいというものでした。
後者の病院を選んだ結果、1月にギリギリ滑り込みで最後の2日間だけ「ミス・サイゴン」の舞台に上がれました。それは感動というよりも“ひとつの山を乗り越えられた”という自信になった気がします。
術後、3日間の絶対沈黙の後、「声を出していいのは1日5分だけ」という期間が1週間あり、2週目は「1日1時間以内まで」に延びました。3週目からは制限がなくなって歌い始めましたが、舞台で歌う声になるまでは、地道な発声練習が続きました。声を使わなかったことで、喉の筋肉がすっかり衰えていたからです。
実は今も従来の声ではありません。でも、それは仕方がないこと。私の喉は手術で削られ、今までのそれとは変わったのです。例えるなら、生後まだ11カ月の赤ちゃん。今は元の声を取り戻すのではなく、新しい喉で新たな可能性を広げていこうと思っています。