93歳のおばあさんが治療した分だけ長く生きた意味
38歳の孫娘とその夫、ひ孫にあたる小学校1年生のT君と一緒に暮らしている93歳のおばあさんがいます。孫娘は近所のスーパーで働き、夫は単身赴任中で月1回だけ家に戻ってきます。
おばあさんは、午前中は縁側で日なたぼっこをしながらうつらうつらして、午後にT君が学校から帰ってくると、2人でお菓子を分け合って食べながら、夕方まで過ごします。近所にはT君と同年代の子供がいないこともあって、おばあさんはずっとT君と一緒でした。
T君はおばあさんのことを「おーばっぱ」と呼んでいます。2年ほど前から、おばあさんはお金の計算ができなくなっていました。算数の宿題があるときなど、T君は「おーばっぱは足し算ができない」なんて少しバカにしたような言い方をするので、お母さんによく叱られていました。
6月のある日、X線検診を受けたおばあさんの肺に影が見つかりました。病院で「肺がん」だと告げられましたが、おばあさんはよく理解できていない様子でした。高齢なこともあって手術はできないため、これ以上は検査もしない、治療もしないことになりました。