患者の長い人生に付き合っていく 医者としてのひとつの道
幸い彼女はそこまで悪い状態ではなく、しばらく経過観察が続きました。その間に結婚したという報告があり、さらに妊娠して子供が生まれたという喜ばしい知らせもいただきました。
子供がまだ幼い頃、旦那さんと3人で病院を訪ねてきてくれたこともありました。すっかり若奥さまといった雰囲気で、担当医である私もうれしく思っていました。
しかしそれから数年後、2人目の子供を妊娠したタイミングで、心不全の症状が表れました。大変残念なことにお腹の中の子供にも影響が及んでしまったため、流産の手術が行われました。大きなショックを受けて落ち込んでいた彼女の姿をいまでも覚えています。
その後、すぐに「心房中隔欠損」と「部分肺静脈還流異常」の手術を行うことになりました。部分肺静脈還流異常とは、肺から心臓に戻る肺静脈の一部が本来つながっているべき左心房以外につながってしまって、右心房や大静脈に還流している状態で、心房中隔欠損と合併しているケースが多い病気です。
心房中隔欠損と同様に無症状ならば治療を待てる場合も多いのですが、心不全を起こしたとなると手術が必要です。