筋ジストロフィーの小澤綾子さん「歌うことが生きる力に」
初めてフェイスブックでその人を知ったときは、「さぞかし人生に絶望しているんだろう」と思いました。でも、本人の「歌作りが忙しくて時間が足りない」という充実したコメントを目にして衝撃を受けたんです。人はどんな状態でも何でもできるんだなと教えられました。ただ、「君に歌ってほしい。CDを作ろう」というメールをくれた2カ月後に彼は亡くなってしまいました。
私は数年後の話だと思っていたけれど、彼にとっては“今”だったんだと気付いて、とても後悔しました。CD化した歌は彼に聞いてもらえなかったけれど、生まれて初めて私が歌うことに意味がある“私じゃなきゃダメ”なものを与えられました。それが、私の生きる力になったんです。
去年までは杖で歩けたのですが、今年は車椅子になりました。今できることが来年はできないかもしれない。歌だっていつまで歌えるか……。だから今このときを生きるんです。私、今がいちばん幸せです。
▽おざわ・あやこ 1982年、千葉県生まれ。大手企業に勤務する傍ら、31歳から歌手活動を開始。CD「嬉し涙が止まらない」を携えて病院やイベントなどで歌声を披露している。テレビや人気ラジオ番組に出演したり、海外イベントに招待されるなど幅広く活躍。10月2日(火)、3日(水)には自身の初の著書「10年前の君へ~筋ジストロフィーと生きる~」の朗読会が東京・野方区民ホールで開催される。