筋ジストロフィーの小澤綾子さん「歌うことが生きる力に」
初めて病院に行ったのは中学3年生のときです。高校進学にあたり、担任の先生が「成績はトップなのに体育だけが問題。もし何かの病気なら診断書があった方がいいから一度病院で診てもらったらどうか」と言われ、その旨を親に告げて、やっと受診できたのです。
ところが診断は「個人差です」とのこと。診察は歩き方や走り方を見ただけでした。「そんなわけない」と思いつつ、何も言えません。「結局、誰にも分かってもらえないんだ」と知って、診察室を出た途端に涙があふれました。
今思えば、整形外科を受診したのが間違いでした。この病気は神経内科の病気です。でも、そんな科があることすら当時は知りませんでした。
2度目の受診は大学に入って間もなくでした。「ちゃんと検査してもらいたい」と親に告げ、大学病院の整形外科を受診しました。そこから神経内科に回され、「進行性の筋ジストロフィー」と診断されたのです。
医師は「治療法も薬もない。10年後には車椅子で、その先は……インターネットで調べてください」と言葉を濁しました。ショックだった半面、「やっと分かってくれる人がいた!」といううれしさもありました。とはいえ、当時は「車椅子になったらもうおしまいだ」と思い、夢や将来は考えられなくなりました。楽しかったはずの友達との会話に何一つ共感できなくなり、家と学校を往復するだけの毎日に……。