染色体異常を血液検査のみで判定「新型出生前診断」の課題
彼女が受けたクリニックでは、金額は許可施設と変わらない約20万円。許可施設と違い、カウンセラーはおらず、ドクターからNIPTの説明を受けただけだったという。その後、採決した血液が検査会社に送られ、2週間ほどでA子さんのもとに結果が届いた。結果は陰性だったという。
しかし、中には陽性になる妊婦もいる。そのときに妊婦が直面するのが、命の選別だ。お腹の子どもの染色体疾患が判明した場合、9割の妊婦が中絶を選択するといわれている。それは障がいを持って生まれてくるであろう子どもを親が育てていく環境や、知識を伝える環境が不足しているからではないだろうか。十分なカウンセリングが不足しているため、「大変だ!」というイメージがばかりが先行し、どうしても、中絶を選択してしまうのが今の日本の現状だ。医者側も陽性が出た場合は、暗に妊婦の中絶を前提にして話を進めている現状もあるようだ。
国には、NIPTの在り方だけではなく、命の選別に対する考え方に対しても、検討していくことを望みたい。まずは十分なカウンセリングを妊婦が受けられる態勢を整えることが急務ではないか。
(取材・文/ジャーナリスト 中西美穂)