認知症在宅介護 子供の肉体的精神的負担を喜ぶ親はいない
先日、映画「長いお別れ」を見た。山崎努さん演じる元校長の認知症発症から死までの7年間、そして、ともに生きるその妻と娘たちの日々を描いた作品だ。ゆっくりと進行していく認知症の現実、その現実と向き合う家族の姿などをリアルに描いている。
確かに上質の作品であることは間違いない。ご存じの方もおられるかもしれないが、私自身、若いころから映画好きで、これまで4作品もの、一般公開された映画の監督を経験している。そのうちの一作「『わたし』の人生 我が命のタンゴ」は施設に入れることで初めて認知症の親の良さを見つけた話だ。
映画はひとつの表現様式にすぎず、必ずしも現実をただ忠実に描くものではない。ただ、認知症を取り巻く環境を知る医者として「長いお別れ」に「在宅介護の美談部分にフォーカスしすぎているのでは?」という印象を持った。つまり、この作品がフォーカスする家族愛の世界とは異なり、現実の認知症高齢者の在宅介護は当事者にとってはもっと過酷だということ。そのことを忘れてはならない。
「認知症の母親の見たことのない笑顔に、娘さんが感動していました」