前立腺がんの放射線治療を最大限活かす「1センチの隙間」
ところが、そんな直腸障害を低減させる医療材料が認可されたのです。ハイドロゲルスペーサーがそれで、局所麻酔で会陰部から針を挿入し、直腸と前立腺の間にハイドロゲルを注入します。体内に入ったゲルは数秒で固まってゲル化し、3カ月ほど安定し、1センチ程度の隙間ができるのです。これにより、前立腺に強い放射線を照射しても、直腸への影響を防ぐことができます。ゲルは治療後、半年から1年で体内に吸収されます。
米国の比較試験では、スペーサーありの直腸障害は2%でしたが、なしは7%と有意に高い。尿路や性機能などのQOLは、ありが明らかに勝っていました。東大病院でも良好な結果が得られています。
前立腺は通常照射だと38回と2カ月近い時間が必要ですが、ピンポイントで病巣を叩く強度変調照射のIMRTは5回。IMRTとスペーサーを組み合わせれば、仕事がある人も5回の半休で治りますから、治療と仕事の両立も難しくありません。