すり鉢であたる手間が体を元気にする食材のうま味を引き出す
山の恵みの多糖類は強い粘りを生み腸内環境を整える
自然薯や大和芋は、昔から精のつく食材として知られています。消化酵素のアミラーゼやジアスターゼは消化を助けるだけでなく、栄養の吸収を促進、体を元気にしてくれるからです。
5大栄養素のうち脂質を除くタンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラルが豊富にバランス良く含まれています。
調理法によって食感が劇的に変化するのが大和芋の特徴でもあります。そのまま生でいただけばシャキシャキ、すりおろすとネバネバ、火を通すとホクホク、モチモチした食感になります。
今回のメインはビタミンCの豊富なニラや桜エビとともに揚げ物、もう一品はバター焼きにしました。
いずれも、すりおろしたものを使いますが、できるだけすり鉢であたることをお勧めします。その方が滑らかで、のびもいいからです。
すり鉢であたるのは力仕事になりますけど、料理はこのひと手間が出来上がりを大きく左右します。下ごしらえを丁寧にすることによって素材のうま味が引き出され、必要以上に調味料を使わずに済むのです。ひいては塩分を控えることにつながります。週末はお父さんがご家族とコミュニケーションを取りながら腕を振るうのもよいかもしれません。
すりおろした大和芋や自然薯は、密閉して冷凍保存も可能です。腹持ちもよいですし、冷凍保存しておけば、解凍してそのまま生でも、火を通して揚げ物や焼き物にしてもおいしく召し上がれます。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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