最高額の薬はウイルスを使って遺伝子を細胞の核まで届ける
「脊髄性筋萎縮症」(SMA)に対する遺伝子治療薬の解説を続けます。前回は、2種類ある遺伝子治療薬「スピンラザ」(一般名:ヌシネルセン)と「ゾルゲンスマ」のうち、スピンラザについてお話ししました。スピンラザは世界初の核酸医薬品で、価格は1瓶(5ミリリットル)で932万円、最初の1カ月の薬代は3000万円弱という超高額医薬品として注目されました。
しかし、ゾルゲンスマはそれをはるかにしのぐ現在の最高額医薬品で、1回の投与が約2億3000万円という超ド級の金額なのです。ただし、ゾルゲンスマは国内未承認で、日本国内で使用されることはありません。
ゾルゲンスマの画期的なところは、まず「一生に一度きりの投与」という点が挙げられます。通常、薬は継続的に使用するものですが、ゾルゲンスマは一度で効果を持続するのです。
2つ目に、目的としている神経細胞の核まで薬を到達させるのに「ウイルスを用いている」という点で画期的です。簡単にいうと、病気(SMN1遺伝子異常)によって不足したSMNタンパク質を再び体内で作れるようにするため、SMN1遺伝子をウイルスに入れ、そのウイルスを感染させることによって薬を細胞まで運ぶのです。