まもなく臨床開始「回復者血漿療法」は新型コロナを殺すか
50人の血漿を50人に投与
よく耳にする「血清」は、血漿からさらに白血球を除いたもので原理は同じ。効果にそれほどの差はない。以前はマムシにかまれたときに、血清を投与した。最近話題の映画「感染列島」(2009年)ではウイルス感染で重篤な状態に陥った女子高生に最後の手段として血清を投与する場面が出てくる。
国立国際医療研究センターは回復した人約50人から1人400ミリリットルの血液の提供を受け、血漿を患者50人に投与して安全性や効果を調べる方針だ。
ハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏はこう言う。
「血漿は投与したらすぐに体内でウイルスと戦い始めます。同じ原理の破傷風の血清療法の場合は1時間以内に効果が表れます。今でもハブにかまれた際の治療として行われ、すぐにやるとほぼ助かります。今回の血漿療法はかなりの効果が期待できると思われます。効果の有無は投与して数日で分かるはずです」
血漿は患者への投与だけでなく、健康な人への予防薬としても使える。ただし、取り扱いに手間がかかるそうだ。
「ワクチンは小型アンプルの状態で保存できますが、血漿は変質しやすいので冷凍保存し、解凍してから注射することになります。そのため予防にはあまり使いません」(左門新氏)
血漿療法の臨床試験が成功したら、危険な状態の患者の命が助かる可能性がある。一刻も早く実用化してもらいたい。