<9>日本人は相対的に安全の文化を持っている
人・物・情報が国境を越えて激しく動くグローバル時代、衛生環境の良い文明国でも広がったのが今回の新型コロナウイルス感染症だった。
「他の動物になく人間だけにある特質は、言葉と手を使うことです。快適な居住空間が整備された文明国でも新型コロナが広がったのは、この言葉と手が感染ルートになったからです。つまりこのウイルスは文明社会で広がるのにピッタリのものだった、と私は考えています。これに対抗するには、従来の生活様式や行動様式を一度見直すことも重要です。その意味で今回の新型コロナウイルス感染症は、人類の将来を占う、重要な分岐点となる感染症だと言えるでしょう」
これまでの危険な感染症は、感染した人のうちの多数が症状を出すものだった。新型インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)などの場合、感染するとすぐに症状が表れる。そのため、早期に対処することができ、封じ込めに成功し、局地流行だけに抑えられてきた。
ところが、今回は自覚症状に乏しい感染者が多く、そのことが感染拡大につながったといわれる。