<10>昆虫ウイルスが“証明”した自然免疫の強い抗ウイルス力

公開日: 更新日:

 阿部博士はその後、大阪大学微生物病研究所の松浦善治教授のもとで研究を進め、そのワクチン効果が、病原体をパターン認識し、抗ウイルス状態に誘導する「自然免疫」によるものであることを突き止めた。「自然免疫」は、想像以上にウイルスに対して強力に対抗しているのだ。

■強い新型コロナ耐性を持ちながらの過剰自粛は必要か

 新型コロナウイルスも、抗体のみによって体から撃退されるわけではない。抗コロナウイルス抗体が大量に誘導されていても、重症化する人もいれば、逆に抗体が少なくても、回復する人もいる。動物のコロナウイルスでは、ウイルスに対する抗体によって逆に重症化すること(抗体依存性感染増強「ADE」)も古くから知られている。抗体には善玉抗体(中和抗体)だけではなく、悪玉抗体も存在するのだ。

 新型コロナウイルス感染からの回復には抗体だけではなく、細胞傷害性T細胞などによる「細胞性免疫」、さらには「自然免疫」が重要な役割を果たしている。


 強力なロックダウンによりなんとか収束に持ち込んだ欧米とは異なり、日本は3月時点の自粛レベルで感染爆発を抑え込むことに成功した。

 日本人は、この新型コロナウイルスに対して、欧米人以上の耐性を持っている。そのメカニズムの解明は先になるが、我々は、その恩恵を素直に享受すべきだ。過剰自粛はもったいない。

(京都大学ウイルス・再生医科学研究所・宮沢孝幸准教授)

【連載】第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」