受精に「PH」の攻防あり 意外に知らない“ガマン汁”の役割
精液の約3割は「前立腺」から分泌される「前立腺液」で、約7割は前立腺の後ろにある「精のう」という器官から分泌される「精のう液」です。この精液の中には、精子の運動エネルギーのもととなる数々の栄養物質が含まれています。
一方、精液を受け入れる側の女性の腟も、性的興奮がないときには、雑菌の侵入から守るために強い酸性(pH3.8~4.5)の環境にあります。ところがペニスを腟に挿入すると、ガマン汁が潤滑液の役割を果たすとともに、この環境をアルカリ性に中和してくれるのです。
射精された精子は子宮の入り口の子宮頚管へと進みます。子宮頚管からはアルカリ性の「頚管粘液」が分泌されており、ここからはアルカリ性の環境が続きます。しかし、通常は頚管粘液の粘度が高く、精子はなかなか通れません。ただ、通過しやすい時期が定期的に訪れます。それが排卵時期です。
排卵直前になりエストロゲンの血中濃度が上昇すると、頚管粘液の分泌量が増えて透明度が高くなり、粘液がよくのびるようになります。そうなると精子は粘液を通過し、受精が起こる卵管へと進むことができるのです。
このように受精には「pH」の攻防があるのです。腟内に射精される精子数は約2~3億個。そのうち子宮頚管を通過できるのは1%。その後、100万分の1まで減少し、受精できるのはたった1個。それが“あなた”です。